相続のQ&A

 相続ついて,皆様からよく聞かれる質問をまとめてみました。質問をクリックすると,答えが出ます。



1.【不動産の共有】
 父親が死去しましたが,特に争いもないし,費用もかかるで不動産の名義変更はそのままでいいですか?

 特に,法律で名義を変更しなければいけないということはありません。しかしながら,名義を変更しておかないと,いざというときに売却もできません。また,相続人のうち誰かが死去すると,相続人の数が増えてしまいます。そのうちに,話しがまとまらなくなって名義変更が出来なくなったりする可能性もあります。

 ですから,争いがないのであれば,むしろ今のうちに遺産分割をして名義を変更することが必要です。
 
2.【相続税の額】
 相続税の計算方法はどのようになっていますか?

 相続税の計算方法は,「相続税の計算方法」のページをご確認下さい。
 なお,相続税法の改正がありますので,ご注意下さい(改正については,こちらをご参照下さい)。
 
3.【揉めた場合には】
 遺産分割がまとまりません。どうしたら良いでしょうか。

 遺産分割の話し合いがまとまらない場合には,速やかに裁判所に遺産分割調停を申し立てることをお勧めします。
 裁判所というと,時間もかかるということで敬遠する方もいらっしゃいますが,調停委員が間に入って公平な分割を進めてくれますので,感情的に話し合いが出来ないような場合には,是非,ご活用下さい。

 もっとも,遺言書がある場合等において,紛争解決の手続きが違ってくる場合がありますので,専門家にご相談下さい。
 
4.【行方不明の相続人】
  遺産分割は,相続人全員でないとできないのでしょうか?長女が行方不明になっているのですが,どうしたら良いでしょうか。

 まず,戸籍で行方不明者の現在の本籍地を特定します。そして,本籍地の市区町村で発行している戸籍の附票で,行方不明者の現在の住所を確認できます。

 ただ,それでも,所在が不明な場合には,家庭裁判所に不在者財産管理人選任を申し立て、不在者財産管理人が行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加し、遺産を分割します。

 また,7年以上,行方不明が続いている時には,家庭裁判所に失踪宣告を申し立て,行方不明者を行方不明になった時から7年後に亡くなったものとみなしてもらうこともできます(普通失踪)。そうすれば,その人を抜いて遺産分割をすることが可能になります。

5.【遺言事項】
 遺言書にはどんなことを書くことができますか?遺言できることについて法律に定めはあるんでしょうか?

 法律で,遺言事項として認められているのは,以下のとおりです。

  1. 未成年者の後見人の指定
  2. 後見監督人の指定
  3. 相続人の廃除及び廃除の取消
  4. 相続分の指定・指定の委託
  5. 特別受益の持ち戻しの免除
  6. 遺産分割の方法の指定・指定の委託
  7. 遺産分割の禁止
  8. 遺贈
  9. 共同相続人の担保責任の減免・加重
  10. 遺贈減殺の順序・割合の指定
  11. 財団法人設立のための寄付行為
  12. 遺言執行者の指定・指定の委託
  13. 祖先の祭祀主催者の指定
  14. 信託の設定
  15. 生命保険受取人の変更
 もっとも,これらは法律で法的な効力が認められているというもので,これ以外のことを遺言書に書いてはいけないということではありません。
 むしろ,どうしてこのような遺言書を書いたのかという理由を書いておけば,相続人も納得してくれるかもしれません。

 
6.【遺言年齢】
 遺言書は何歳から書くことができるのですか?

 遺言は,満15歳以上であれば作成することができます。
 なお,遺言は,一身専属的な行為なので,親が親権者として,子を代理して作成したりすることはできません。

7.【遺言書と異なる遺産分割】
遺言書と異なる遺産分割をすることは出来るのですか?

 相続人全員の合意があれば,遺言と異なる遺産分割をすることも可能です。遺言書で遺贈されたとしても,受贈者にも,遺贈を受けないことを選択する自由があるからです。

8.【遺言の文言】
 
「相続させる」という遺言と,「遺贈する」という遺言は,効力が違うのでしょうか。

 一般的には,相続人に財産を帰属させるときには,「相続させる」と記載して,相続人以外の人に財産を帰属させるときは「遺贈する」とします。
 効力的には,土地・建物の登記申請をする場合に,「相続させる」とすると相続人が単独でできますが、「遺贈する」では受贈者と他の相続人全員(或いは遺言執行者)との共同申請になります。

9.【負担付遺贈】
  父の遺言書には,「長男に全財産を遺贈するが,その代わりに母に生活費として月3万円を支払ってくれ」と記載してありました。ところが,長男は,遺産だけ独り占めして,母親へ支払いをしません。どうしたら良いでしょうか。

 財産を遺贈するにあたって,遺贈を受ける者に対して,一定の義務を負わせることができます。これを「負担付遺贈」といいます。
 この場合,遺贈を受ける側も,遺贈を承認するか放棄するか選択をすることができます。
 遺贈を承認したのにもかかわらず,義務を履行しない場合には,相続人は,相当の期間を定めて履行の催告を行って,それでも履行がない場合は,その負担付遺贈にかかる遺言の取消しを家庭裁判所に対して請求することができます。
 本文でも,まさに義務を履行しない場合ですので,上記の手続きをとることになるでしょう。

10.【戸籍の調査】
 相続人の調査というのは具体的にどうするんですか。

 相続人の調査は,被相続人の出生から死亡するまでの全ての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取り寄せて調べるのです
 そのすると,過去に認知していた子が存在したりすることがあります。家族も知らないばかりか,その子自体,疎遠で,故人と会ったこともないなどということもあります。しかし,それでも戸籍上,子であるとすると,遺産分割に参加してもらわなければなりません。

11.【胎児の相続権】
 
まだ生まれていない子供は相続人になれるのでしょうか。

  民法の規定により,相続に関しては,胎児は生まれたものとみなされます。ですから,相続人の一人となります。ただし,死産の場合は相続人とはなりませんので注意が必要です。

 
12.【養子と相続】
  私は,養子に行きましたが,実父が死亡した時には,財産を相続することはできるのでしょうか。

 養子縁組をした場合でも実親との親子関係がなくなることはありません。それゆえ,養子になった場合でも実父母に対する相続権はあります。養子は実の父母と養父母の双方の相続人となります。

 但し,「特別養子」の場合は実父の相続は出来ません。
 特別養子というのは父母による監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合で,子の利益のために特に必要があると認められる時に,家庭裁判所の審判によって認められる養子です。
 原則として6歳未満の子であること,父母の同意があること,6ヶ月以上の試験養育期間が設けられていることなどが要件となって認められることになっております。この特別養子は、養子縁組後は実の父母およびその血族との親族関係が終了します。

13.【相続分がないことの証明】
 父の相続について,私は財産はいらないと他の相続人に伝えたのですが,そうしたところ,「相続分がないことの証明」に押印してくれと言われました。この証明書は何なのですか。

 「相続分がないことの証明書」は,自分は故人の生前に相続分を超える財産の贈与を受けているので,今回の相続に関しては,相続分がないということを証明するものです。

 この証明書があると,不動産の登記をするときに,この証明書をつけて登記ができるので,多用されています。

 もっとも,きちんとした相続放棄とは違いますので,故人に借金がある場合には借金を引き継いでしまいますので,借金を引き継ぎたくないのであれば,きちんと相続放棄をしたほうが良いでしょう。

14.【特別代理人】
 父の相続について,母親が未成年の子供を代理して遺産分割協議をしても良いのでしょうか。

 かような場合に,子供を代理して遺産分割を成立させることはできません。手続きとしては,未成年の子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てなければなりません。未成年の子が数人いる場合には,一人一人に特別代理人が必要となります。

15.【内縁と相続】
 内縁の妻には相続権がありますか。

  内縁の妻には相続権がありません。相続人として定められている「配偶者」には内縁の妻は含まれないからです。あくまでも,婚姻届を提出しているかどうかが基準になります。

 内縁の妻に財産を残したいときには,遺言書を書いておく必要があります。

16.【相続の廃除】
 私の兄は,父親に暴力を奮ったり,頻繁に金をせびったりしてきます。父親は財産を兄に一切,相続させたくないと言っていますが,方法はありますか。

 遺言書を作成して,兄に一切の財産を相続させないことが考えられます。しかし,それでも,遺留分があるために,兄に一切の財産を渡さないということは難しいものです。

 ただし,兄の非行の程度が相当なものである場合には,相続人からの廃除が認められる可能性はあります。

 相続排除は,以下の場合に認められます。
 @被相続人に対して虐待を加えたり、重大な侮辱をした場合
 A 相続人が著しい非行を犯した時

 ただし,家庭裁判所への排除の申請をして,認められてから,はじめて排除ができます。家庭裁判所の調査により,被相続人にも非が明らかになれば排除は認められません。
 また,現実的には相続の廃除を認めて貰うことは難しいのが実情のようです。

17.【相続欠格事由】
 父が死亡したのですが,私の兄は,父の遺言書を偽造していたことがわかりました。それでも財産を分ける必要があるのでしょうか。

 遺言書の隠匿は,相続欠格事由に該当します。

 相続欠格とは,一定の事由のある場合に,相続権を自動的に失うものです。

  1. 故意に,「被相続人・相続について先順位、同順位にある者」を死亡するに至らせ,または至らせようとしたために刑に処せられた者。
  2. 被相続人の殺害されたことを知って,これを告発せず、または告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき,または殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺、または強迫によって被相続人が相続に関する遺言をし,撤回し,取り消し、または変更することを妨げた者。
  4. 詐欺または強迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせたり,撤回させたり,取り消させたり,又は変更させた者。
  5. 相続に関する被相続人の遺言書について,偽造,変造,破棄または隠匿した者。

18.【再度の遺産分割】
 遺産分割について全員の合意でやり直すことは可能でしょうか。

 話し合いにより,一度決まった遺産分割を解除することは可能です(合意解除といいます。)。

 ただし,再度,遺産分割をした場合に,税務上は,分割後の贈与であると認定されて贈与税が課されるおそれがあります。ですから,現実にはあまり再度の遺産分割協議はされません。

19.【書証真否確認の訴え】
 遺産分割を終了して,全員が実印を押した分割協議書を作成したのですが,一人のひとが,やっぱり嫌だと言って,印鑑証明をくれないために,不動産の名義変更が出来ません。遺産分割をやり直すしかないのでしょうか。

 この場合,遺産分割自体は,実印まで押印しているのですから,合意に達してきちんと成立しています。

 ただ,登記申請の際には印鑑証明が要求されるので,一人でも印鑑証明を出さないと登記を受け付けてくれません。
 しかしながら,この場合,遺産分割をやり直す必要はありません。

 すでに作成された遺産分割協議書について,きちんと有効に作成されたものであることを裁判所に認めて貰い,その判決を添付すれば,登記ができます。
 この裁判のことを「書証真否確認の訴え」と言います。

20.【遺産分割と差押え】
 遺産分割協議をしていたら,一人の相続人が借金をしていて,その債権者が勝手に相続登記をして,その相続人の持ち分を差押えてきました。
 この債権者と遺産分割の交渉をしなければならないのでしょうか。

 債権者の差押えの登記よりも,遺産分割の登記を先にしてしまえば,このような事態にならずに済んでいたところです。そこで,相続人に債権者がいる場合には,早めに遺産分割協議をしなければいけません。

 もっとも,登記をされたとしても,その相続人が相続の放棄をしてしまえば,はじめから相続人ではなかったことになりますので,債権者の相続登記は無効なものとなり,差押えも抹消されることになります。
 もっとも相続放棄は,相続を知ってから3ヶ月という時間制限があるので注意しましょう。

21.【遺産分割調停の管轄】
 遺産分割の調停を申し立てようと思うのですが,相続人が,東京,仙台,福岡にいます。亡父は東京に住んでいたのですが,このような場合,どこの裁判所で申立をすれば良いのでしょうか。

 遺産分割調停は,相手方の住所地を管轄する裁判所に申し立てます。被相続人の居住地ではありませんので,注意が必要です。

 申立てようとするあなた自身が,東京に住んでいても,遺産を巡って争いになっている相手が福岡に住んでいれば福岡の裁判所に申し立てます。
 もっとも,相手方の中から一カ所を選べば良いので,相手方が東京に住んでいる場合には,他に福岡や仙台に住んでいる人がいても,東京に申立をすることができます。

22.【受遺者が先に死亡していた場合】
 私の母親は,すでに死亡しているのですが,その後亡くなった叔母が母親に財産を遺贈する旨の遺言書を書いていました。この場合,母は亡くなっているので,その子供である私が財産を取得出来るのでしょうか。

 受遺者が遺言者より先に死亡していた場合には,遺贈は無効となります。
 そこで,受遺者であったろう母親の子供が,代襲相続をすることはありません。
 遺贈が無効になると,財産は遺言者の相続人が相続することになります。

 遺言をするときに,受遺者が死亡していた場合に,他に遺贈したい場合には,遺言者は,「受遺者が先に死亡した場合には,その相続人に遺贈する」というような遺言をしておくべきでしょう。

23.【遺贈の対象となる財産の生前処分】
 父の遺言書には,ある不動産を,長男である私に遺贈するとの記載がありましたが,その不動産はすでに生前に売却されていました。私の権利はどうなるのでしょうか。

 故人が遺言の内容と違う売却処分をした場合には,その遺言は取り消されたものとして扱うことになります。そこで,あなたは不動産に対して権利を主張することはできません。